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“アナウンサーが自分のアイデンティティ” 五戸美樹さん(日本)

2021年3月31日

担当するラジオ番組の開始直前の様子

試行錯誤の先にみつけた自分の本当の声

美樹:これは一つ一つクリアしていくしかないんですよね。語彙力を上げるためには、先輩がやっている中継レポートを全部書き起こして、言葉のレパートリーを自分のものにしていきました。歩きながら今日の風はこうで、天気はこうで、、と考えて繰り返し練習しました。

原稿をまとめて話す構成力という点に関しては、番組に放送作家という喋る用の原稿を書くプロがいるんですけど、その方に軽く弟子入りして書いた原稿を繰り返しみてもらい直す力をつけました。

伝える内容に関しては、2~3年目には割と出来るようになった実感がもてました。ただ、声だけは改善できなかったんですよね。

事務局:声ですか。

美樹:はい、当時は今よりもっと高い声で話していたんですよね。その方が明るく聞こえると思っていましたし、先輩達も比較的高い声で話されていて、それに倣うように言われていたのもありました。

でも実は、高い声って喉をぎゅっと絞めるので滑舌が悪くなるんですよ。高い声を出すときは、喉頭に力を入れて、上に引き上げ、声道を短くして発声しているんですね。

外側の「喉頭筋」に過度な力が働いています。それは、喉頭筋肉群・神経群が過度に緊張するということで、舌骨に繋がる筋肉「舌骨筋」にも影響してしまい、滑舌が悪くなっていた、ということなんです。

普段の声では「ニッポン放送からのお知らせです」って言えるのに、高い声にするとそれが言えない。でも当時は、滑舌の悪い原因が高い声だとは知られていなくて、毎日2~3時間高い声での発声をひたすら練習していました。本番ではやっぱりうまく言えないんですよね。

ある時、ご一緒していた声優さんから「普段の声のほうがいい声だよ」と言われたんです。本当に驚きでした。それまでは高い声がいい声だと思いこんでいたので、そんなはずはないと。

でも実際に自分の声を確認してみると、用意された原稿を読むときと、自分の言葉でレポートするときの声が違うことに気づいて、後者のほうが緊張なく楽に出ている声だなと感じたんです。

そこからナレーションの声も普段の声に近づけるように「このくらいかな?」と声の研究を繰り返して、だんだんと自分の声を見つけていきました。普段の声でニュースが読めるようになった時、初めて自信になりました。

事務局:美樹さんの声が変わった瞬間ですね!声を変えてからの周囲の反応はいかがでしたか?

美樹:そうですね、単純に「うまくなったね!」と言われましたし、「性格変わったよね」とまで言われることもありました。それまで出来ないと塞ぎ込んでいましたからね。人のせいにしたり、うまく発声できる後輩を見ると嫉妬したり(笑)、で気分が落ち込むこともありました。

事務局:そうだったんですね。ご自身の声を見つけたあとにフリーアナウンサーとして起業されたんですよね。その経緯を教えてください。

美樹:「働き方改革」で残業規制が厳しくなったんですよ。私の入社当時は朝から晩まで働いている先輩方がいたんですけど、どんどん規制が厳しくなって仕事する時間が制限され始めました。

早朝に出演したら、昼過ぎには帰らなくてならない。平日に出演したら、土日の司会業などの依頼は全て断らなければならないんです。

良くいえば会社は従業員を守ってくれているんですけど、悪く言えばエンターテインメントに働き方改革は合わないんです。私は「もっともっと話したい!仕事させて~」と思っていました。

それと私は下手な期間が長かったので、会社の中で「あの子は下手だよね」っていうイメージがついているような気がして、他局で勝負してみたいと思ったというのもあります。

次のページラジオ局で培ったスキルを思う存発揮する!

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