母も参加した表千家の先生の茶事にて
容子:お母様の影響がとても大きいように感じます。お母様は生前から、人気紀行番組”世界の旅”の兼高かおるさんや国連の緒方貞子さんら、世界で堂々と活躍する日本女性を尊敬されていらしたとか。
えみか:そうなんです。学校の同級生だった映画字幕翻訳で有名な戸田奈津子さんなどが活躍されている姿に憧れていたみたいです。ただ母は活躍する女性に憧れながらも、結婚を機に仕事を辞め、専業主婦になりました。
私は母の時代とは違うにもかかわらず、結局、結婚したら家のことに専念したいと母と同じことをしました。
容子:これは、女性の永遠のテーマではないでしょうか。
えみか:私は仕事を続けられる環境にあり、夫も協力的でしたので迷いました。悩んだ末、座禅道場に行きました。ある先輩が座禅に行った時の体験談で、「箒で落ち葉を履いている時、だんだん落ち葉の気持ちになってくるんだよ」と教えてくれ、興味が湧いて。
座禅体験はストイックでしたが、「今」に集中することができた不思議な瞬間でした。今思えば、ターニングポイントで、そこで仕事を辞めて自分がしたいことをしていいんだという思いに達しました。激務の中、夜の茶道の稽古にギリギリ駆け込むのではなく、一度落ち着いて昼間にじっくりとお茶に向き合ってみたいと思いました。
容子:座禅での決断というのは興味深いですね。
最大のロールモデル、祖母と母と茶会へ
えみか:その後、主人の転勤で神戸に移住になり、容子さんのお友達が関西のテレビ局にお勤めで、取材で素敵な先生にお会いしたとご紹介を受け、江戸千家の先生のもと、茶道の稽古を続けます。
容子:そんなこともありましたね!東京に戻ってからは、お家元に通っていらっしゃいますよね?茶道界ではかなり凄いことです。
えみか:そうなんです。お家元の奥様が教えてくださる教場で習うことになりました。92歳で亡くなるまでお茶をしていた祖母の影響もとても大きいです。
容子:お祖母様も表千家なのですか?
えみか:裏です。祖母は、流派が違うとちょっと悲しんでいましたが、毎年春に明治神宮で開催していた茶会に来てくれました。
私の先生も、ある会報誌に祖母のことを素敵なお茶人、私の憧れる歳のとり方をされてる人だというようなことを書いてくださってとても嬉しかったです。祖母は私のロールモデルです。