MENU

海外生活を終えた駐在妻達のその後。海外サバイバルスキルとそれぞれの居場所

2021年12月20日
岩井真理 (日本)

海外生活で知らないうちに身につくスキルとは?

その後、A子さんのお家にお邪魔しました。本来なら、ご主人の勤務は別の街なのでその近くのアパート暮らしですが、一年半前に避難帰国した時から、親子3人、A子さんのご実家で暮らしています。

明るく開放感あふれる素敵なお家で、その後家族が一人増え、ご両親とワンちゃん、そしてこの夏に生まれた赤ちゃん連れでちょくちょくいらっしゃる妹さん、みんなでワイワイ、とても賑やかです。

「A子は、日本へ帰ってきたくなかったみたいですよ」と、お父様がおっしゃいました。ご自宅へお伺いしてみて、A子さんがどんなに愛情込めて大切に育てられてきたのかを伺い知ることができました。

初海外生活で、A子さんが大奮闘していたことを、私は知っています。良いことばかりではなかったけど、きっとご両親には楽しかったことやポジティブな面をたくさんお話しているのだろうと思いました。

コロナに振り回されて、思いがけない本帰国となったものの、それ込みで前向きに捉えて、帯同生活に区切りをつけたのでしょう。そこには、妻であり母であるA子さんの、娘でもある顔もありました。

私は先日「強み発見」をテーマに講座をしましたが、そこで取り上げたのは、海外生活で知らず知らずのうちに身につくスキルです。

見知らぬ土地で、逞しくしなやかに成長していったA子さんを目の当たりにすると、改めてそのスキルを実感します。

 

試してみないとわからないと思うようになった

B美さんからも、それを強く感じます。若くして結婚され、既にお孫さんもいるB美さんは、ばあばと言うにはあまりにも若くて綺麗です。

結婚後は家族のために多くの時間を費やしてきましたが、お子さんが成長して独立した後も、子供好きなB美さんは学童保育のお仕事などをしていました。そんな時、転勤になりました。

夫経由の話では「ウチの奥さんは、帯同すると言わないと思った」と旦那さんがおっしゃっていたとか。海外生活へのB美さんの覚悟の程が伺えます。

旦那さんのお迎え付きの赴任だったので箱入り奥様かと思っていたら、ブラジル生活の中では彼女はチャレンジャーで、興味を持ったことには次々挑戦しました。

趣味のウクレレをブラジルでも続けて、ポルトガル語の先生の前でミニ演奏したり、ものづくりが得意で、ご自宅を開放して手芸したり、ホームパーティーしたり、ホスピタリティ溢れる振る舞いが光りました。

「私、変わったと思う。前は、やってみようと思えなかったことも、ブラジル生活を通して、試してみないとわからないと思うようになったの。だって、じっとしてたら何にも進まないからね」と言いながら、今もまた何かにワクワクしています。

「ブラジル生活は、今思えば楽しい特別な時間だったね。この体験に感謝してる」とB美さんは言いながら、また母や祖母としての役割をこなしています。

 

ライフキャリアレインボー

仕事人間だった私もまた、ブラジルへ行かなかったらこの仲間には出逢えなかったでしょう。初めての専業主婦生活も、私にとって視点を変えるチャンスでした。

だから、全く違う人生を生きてきた人達と遠いブラジルで出逢ったことにご縁を感じます。そしてまた、こうしてその後を見届けられることにも感謝の気持ちが絶えません。

ふと「ライフキャリアレインボー」と言う理論を思い出しました。

人はその時その時、人生の役割を果たしています。役割は一つではないので、まるで虹のようにいくつも重なり合い、幅ができます。

A子さんの娘としてのロール、B美さんの祖母としてのロール、私の労働者としてのロール、ブラジルの時間では少しお休みしていましたが、今またライフキャリアレインボーとして復活し、その役割を果たします。

変幻自在に役割を捉えれば、どんな環境に置かれても、その時間の意味づけができ、居場所が見つかります。海外生活サバイバルスキルを身につけた駐妻達のその後を見て、そう気づきました。

帰り際に、梅で有名な庭園へも行きました。季節ではなかったけれど、日本独特の佇まいに、やっと帰国した実感が湧きました。紅葉し始めた木々が夕日に照らされた美しい晩秋の一日でした。

Written by 岩井真理(日本)

1 2

この投稿をシェアする

イベント・セミナー一覧へ
コラム一覧へ
インタビュー一覧へ
ブックレビュー一覧へ
セカウマTV一覧へ
無料登録へ