夕焼けの学校の校庭
と、ここまで教育システムの難しさを述べてきたが、ここでこのシステムのいいところ、をまとめてみた。
イギリスの学生は「塾」に行かない。大体この「塾」についてイギリス人に説明しようとすると、まず「塾?なにそれ?」と聞かれる。
「日本では中学生や高校生は学校終わった後や週末に塾に通うのが普通なんだよ。特に大学受験前はみんな週に何回も、何時間もかけて塾で勉強するんだよ」と言ったら、まるで魔物を見るかのような表情で「ええええええ!?」と驚愕とするのだ。
確かに、GCSEやA levelの際はきちんと勉強することはするが、学校でみっちり授業を受け、学校で出された宿題をきちんとこなせば大学進学への勉強のためにさらに塾に行く必要はない。せいぜい苦手な科目のみ家庭教師をつける程度だ。
日本の学生には当然の「夏期講習」だの春休み中の塾通いだの、イギリスの学生には無縁の世界。週末はスポーツ、夏休みにはキャンプ、とのびのびとしたものである。
目標や好きな科目がはっきりしている学生にはA levelは悪くないシステムである。
3科目のみをみっちり勉強し、授業のないフリーピリオド(Free period) には、課題のエッセイや研究のために図書館で自主勉強をする。
学生たちはその科目はもちろん、いかに効率よく時間を使うのか、タイムマネージメントを学ぶのである。これは大学への準備ともなり、非常にいいシステムだと感じる。
日本のように、各大学独自の試験に合格しなければならないものと違い、全国の18歳が一斉に同じ科目内では同じ試験を受けるわけだから、公平といえば公平である。各大学独自の過去問や赤本に頼り、塾に通う必要はない。
とにかく頑張ってA レベルの3科目を勉強して、その結果と面接などで、自分が申請した大学が受け入れてくれるのを待つのみである。
真面目に勉強しなくてはならないのは同じなのだが、日本と比較すると一発勝負感が少なくてストレスも少ない気がする。
Promは華やかに着飾るチャンス!16歳でもタキシードが決まる!
今回はずいぶん固い話となってしまったが、イギリスならではの華やかな一面もある。
それは16歳で晴れてGCSE受験が終わった学生たちが楽しむプロム(Prom)である。イギリスでは、アメリカのドラマで見るようにパートナーを誘うわけでもなく、友達同士きゃあきゃあ騒ぎながら、とびきり着飾って出かける。
そして18歳、無事にA level受験が終わり、大学進学が確定した学生たちにはさらなるお楽しみが待っている。それはリーバーズボール (Leaver’s Ball) だ。
こちらは学校の芝生のあるお庭で大きな天幕を張って行われることも多く、学生だけではなく両親も招かれ、親元から巣立つ学生たちを派手に見送ろうというパーティーである。
さて、前述の「数学」の選択をどうするか、であるが未だに我が家では父と息子の静かなバトルが続いている。あと数週間のうちに決断を下さなければならないのだが、母親は「これも大人への一歩」だと思い、見守ることに決めた。
Written by アレン真理子(イギリス)
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