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アゼルバイジャン・バクーの季節は市場で楽しむ。ヤシルバザールと春の食材

2021年4月27日
岡田環 (アゼルバイジャン)

バザールで楽しむ、旬の味覚

四月になった。

カレンダーを眺めてふと、そろそろ苺の季節かなと思う。

アスパラガスもあるだろうか、春の野草もたくさん出てきたはず。

春の野菜が出始める頃、入れ替わりにまず白菜の姿が消え、大根が消え、菊芋が消え、ほうれん草が消えて、冬の間親しんだこっくりとした味の野菜たちとは暫しのお別れとなる。

冷蔵技術や輸送技術の発展によって、玉葱や人参、じゃがいもやキャベツだけでなく、茄子やトマト、胡瓜などの野菜も、通年スーパーマーケットで買えるようになってきた、昨今のアゼルバイジャン。

それでもなお、バザールに出かけると、売り場に並ぶ野菜の顔ぶれが、季節の移り変わりとともにくるくると入れ替わり、旬の味覚を愛おしむ季節感がずいぶんと残っている。

春は苺が出始め、木苺と桑の実がそれに続き、夏は本当に豊かで、瑞々しい西瓜やメロン、秋には柘榴や葡萄がふんだんに並ぶその姿は、まさに往時のシルクロードのバザールを彷彿とさせる。

春、苺の季節には、思い出す顔がある。バクー市内の青果市場、ヤシル・バザールの苺売りの馴染みの店主の笑顔だ。

 

春の味覚は、苺の香り

いちごの旬は短い。

はしりの時期には、まだ固く青みの残った果実が、1キロ20マナト(約1,300円)という高値で売り出される。これはほぼご祝儀価格といった風情で、きれいな装飾の箱に入れるなどして贈答用になる。

季節が進んで、だんだん価格も下がって、1キロ10マナト(約650円)以下になってきたら、そろそろ食べてみようかしら、と私も思い始める。

旬の盛りには、1キロ5マナト(約300円強)といったところか。

ただこれも、市内一の高級バザール「ヤシル・バザール」での価格。

この市場では丁寧に選果された質のよい果物が並ぶことで有名なのだけれども、確かに値段はちょっと高い。

それでも、ヤシル・バザールで買う旬の果物の美味しさは、わざわざ高いお金を出して、出向く価値があって。

それに高いと行っても、そこは市場。たくさん買ったり、常連になってくると、値引きがあったりちょっとしたおまけを付けてくれたり、そんな駆け引きも楽しいもの。

そう、ほんのこのひと月ばかりの楽しみに、私は毎日のように苺を買いにゆくので、やがて店主とも顔見知りになり、柔らかで甘い果実を特別に選んでくれたり、その実が潰れないように丁寧に箱詰めしてくれたりするのだ。

だから私はこの市場にせっせと通って、季節ごとに移り変わる美味しい旬の味を満喫することにしている。

 

春のハーブは格別の味

苺の他にも、春の楽しみはたくさんあって、食卓をを彩るのは各種の野草やハーブたち。

アーモンドの花が咲く頃には、冬場にはしょぼんとしていた青菜売り場に、がぜん活気が戻ってくる。

ディル、パセリ、コリアンダー、バジル、青葱、ミント、これらの通年選手に加えて、春には特別のハーブが加わる。

ハーブとは言うものの、単なる薬味としてだけでなく、まるで青菜のようにふんだんに使うレシピが多いのが、アゼルバイジャン料理の特色。

特に「グタップ」という薄焼きの生地に具材を挟んで焼く軽食は、旬のハーブを細かく刻んでふんだんに挟んだものがとても人気が高く、まさに春の味覚。

他にも、キュキュオムレツという、これまた旬のハーブを何種類も取り合わせて、卵液にぎっしりと加えた緑色のオムレツも、春の朝食の定番メニュー。

どちらも、ハーブの爽やかな青々とした香りに、シャキシャキとした歯ざわりを楽しむのに、ぴったりの料理なのだ。

そんな旬の味覚をふんだんに使って、アゼルバイジャンの材料で和食を作って、友人をもてなすことにした。

もちろん、当地では珍しい、日本から輸入した食材を使っておもてなしをするのも一案ではあるものの、私はこの土地で普通に手に入るものを、和の調味料や調理法で工夫して和の料理として、アゼルバイジャンのお客さまお出しすることにしている。

春の野菜とアゼルバイジャンで手に入る材料だけでしつらえる和食の卓

異国の知らない食材の料理よりも、この土地で採れたものをアレンジしたほうが、がぜん親近感が湧いて興味を持ってもらえたり、そこを足がかりにさらに話に花が咲いたりと、料理が橋渡してくれる文化交流の力を深く感じることができる。

先日のテーブルには、地元で採れる野生のアスパラガスの天ぷらや、レモン釜にあしらった、春の野草クレソンのお浸しなどを並べた前菜をお出しして、熱いお吸い物の吸口には、春のハーブをふんだんに。

窓の外には、折しも満開の八重桜。

日本とアゼルバイジャンが繋がって感じられるような、春の宵を暫し。

Written by 岡田環(アゼルバイジャン)

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