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経済的にも文化的にも大発展!シチリアを立て直したアラブ人

2021年3月1日
桜田香織 (イタリア)

827年、アラブ人がシチリアへ上陸

今回はアラブ人の話です。古代ローマ人統治の後、すぐにアラブ人が入ってきたわけではありません。いくつかの民族が入ってきましたが、一番重要だったのはビザンチン人です。

彼らによってキリスト教が持ち込まれ、それまでの「多神教」から「一神教」へ変わります。でも「食」という観点から見れば、彼らのもたらした物は少なく、今回は割愛しようと思います。

827年にアラブ人がシチリアへ上陸し、まずはパレルモ、その後当時の州都シラクーサが彼らの手に落ちます。

この時代の特徴と言えば、まずはイスラム教がもたらされた事です。

そして文化的な多様性と宗教的な寛容さで、この200年という決して長くはない間にシチリア、特にパレルモが経済的にも文化的にも大発展を遂げることができた事でしょう。

まず、州都がシラクーサからパレルモへ移されました。

ビザンチン時代に比べ税金が軽減され、家畜に掛けられていた税金が取り下げられたため、農民は自由に家畜を使って土地を耕すことができるようになりました。

これが荒れ果てていた農地のよみがえりに繋がります。更に優れた灌漑技術が後押しし、シチリアは緑溢れる島に生まれ変わることができたのです。

パレルモ市内の一部には、道の名前がアラビア語でも書かれています

私達にはピンとこないことですが、当時支配者が代り宗教が変わればもちろん一般市民も改宗を義務づけられ、拒否すれば殺されることもあります。

しかしアラブ人は改宗を無理強いせず、単にイスラム教徒には軽い税金、それ以外の宗教(キリスト教とユダヤ教)の人にはそれよりも重い税金をかけることにしたのです。

ユダヤ人にもちょっと触れておきましょう。

祖国をもたないユダヤ人は既にヨーロッパ中に散らばっていましたから、もちろんシチリアにも大勢住んでいて、シナゴクもありました。

彼らはその国を「支配」することはない為、なかなか歴史に顔を出さず、ほとんどその存在を忘れられてしまいがちですね。

スペインなどではユダヤ人はゲットーに住まわされていましたが、ここでは比較的自由に暮らすことが許されていました。

 

アラブ人によってもたらされたおいしい食べ物たち

レモンと苺のグラニータ

シチリアと言えば柑橘類が有名で、日本でもすっかりとお馴染みとなったブラッド・オレンジもシチリア産ですが、これらは元々アラブの産物です。

更に豆類、シナモンやサフランを始めとするスパイス類、お米なども持ち込まれました。

そしてその中でも一番と言っていいほど重要だったのはサトウキビでしょう。それまでは甘味と言えばハチミツだけでしたが、ここで初めて砂糖が登場するのです。

この砂糖、レモン汁とエトナ山の雪を使って、「レモンのグラニータ」、つまりレモンシャーベットの原型ができます。猛暑の夏、バールの日陰に座ってグラニータを食べる至福の時、思わずアラブ人に感謝の気持ちがこみ上げてきますよ。

ゴマ、ピスタチオ、アーモンドも彼らのお陰でこの土地にもたらされ、どれも今のシチリア料理に欠かすことのできない物となりました。ぶどうの絞り汁、ジャスミン、シナモンなどを飲み物の香り付けにし、ゼリーまで作っていたそうです。

アラブ人によって見事に立ち直ったシチリア島は、彼らが持ち運んだヤシの木が南国の雰囲気を醸し出し、カラフルな花と緑溢れる豊かな美しい島となりました。

絹の生産用の蚕の飼育のため桑の木も持ち込まれ、トラパニ地方(シチリア島の北西部)では珊瑚の養殖が行われるなど幅広い商業が発達し、経済発展は目覚ましいものでした。

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