肉のパン粉焼き、シチリア風カツレツ
もっとも一般的なのは、肉や魚にパン粉を付けて焼くと言うやり方。
一見カツレツに見えますが、実は別物です。
肉にオリーブオイル→パン粉の順につけ、フライパンで焼いた物、オーブンでも作れます。野外でBBQをする時にもパン粉を付けた肉を焼くことが多いです。
その小イカバージョン、同様に魚もナスやズッキーニのスライスでも作ります。
更にリピエーノ(何かを何かに詰める料理を「リピエーノ」と呼びます)、こちらも肉でも魚でも野菜でも作れます。
これはヤリイカのリピエーノですが、中身はパン粉が中心。
プラス松の実と甘くないレーズン(日本には入っていないかも)がマスト、パン粉、松の実、レーズンと言うトリオはシチリア料理では定番です。
私はアンチョビとミントを加えました。パセリでも大丈夫。
左:小イカのパン粉焼き、右:ヤリイカのリピエーノ
そこへサクサクになるまでオリーブオイルを加え、イカに詰めてオーブンへ。日本のいか飯のパン粉版といった所でしょうか。
このリピエーノ、アーティチョーク、イワシ、ピーマン、ナスなど、色々な食材で作りますが、まぁ中身は一緒。と言うように、シチリア料理にはパン粉が欠かせません。
余ったパンの再利用、北イタリアではスープと煮込むことが多いですが、シチリアではパン粉として活躍するのです。
詰め物以外には「チーズの代用」として使用します。
冒頭にご紹介したアンチョビのパスタが良い例でありますが、パスタにかける「粉チーズ」の代わりに乾煎りしたパン粉を使用するのです。
ご存知の方も多いかと思いますが、シチリアに限らずイタリア人は魚介類にチーズを使用しません。この辺の食事に関して、イタリア人はとても頑なです。
そしてシチリア人は魚介のパスタに乾煎りしたパン粉をかけて食べるのです。
これはイワシのパスタです。イワシ、松の実、レーズン、フェンネルで作り、仕上げに乾煎りしたパン粉をたっぷりと。
この乾煎りしたパン粉の作り方ですが、とても簡単です。フライパンでパン粉を乾煎りし、色が変わって来たら少しずつオリーブオイルを加えるだけです。
乾煎りする時に鷹の爪を加えると、ピリ辛のパン粉が出来上がります。シチリアの家庭ではこれを綺麗な瓶に入れて保存している人が多く、我が家でも常備してあります。
話を聞いただけではピンとこないかもしれませんが、よくグラタンなどのオーブン料理にパン粉を乗せて焼きますよね?それを思えばなんとなく感覚が掴める事と思います。
リサイクルし、そして元はパンですからお腹にずっしりと溜まるという利点もあったのでしょうね。
昔は人々の生活は本当に貧しく、家で焼いたパンと畑で取れた野菜、そして運が良ければチーズが食生活の中心でした。その中で空腹を満たすためには当然知恵が必要でした。
そんな中から生まれた硬くなったパンの再利用、その知恵が現在のシチリア料理にしっかりと受け継がれているのです。昔の人は賢かった、どの国のどの土地の人達も。
イワシのベッカフィーコ
Written by 桜田香織(イタリア)
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