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クリスマスの本当の意味とは?イタリアのクリスマスとプレゼピオ

2020年12月4日
桜田香織 (イタリア)

イタリアのクリスマスはあまり華やかではない!?

今の時期、日本はもうどこもかしこもクリスマスのデコレーションとイルミネーションでキラキラしている事と思います。それとも今年はコロナ禍で、それほどでもないのでしょうか?

私がJALにいて飛んでいた頃、クリスマスが美しい街はニューヨーク、パリ、ロンドンだと思っていました。

ところが最後にクリスマスの時期を東京で過ごした2011年、その街並みの豪華さにびっくりした記憶があります。先に挙げた3都市に匹敵、いえそれ以上だったかも。

一方イタリアのクリスマスですが、日本の皆さんからよく「イタリアのクリスマスって、美しいのでしょうね」「町中がイルミネーションで飾られるのでしょうね」などと聞かれるのですが、実際はそんな事はありません。

フィレンツェに住み始めて最初のクリスマスを迎える時には私もワクワクしたものですが、あら残念、全くの期待外れでありました。

お店の中にクリスマスツリーが飾られていたり、メインストリートにも多少のイルミネーションはありましたが、たいした事ないのです。

クリスマスソングが聞こえてくる事もありませんでした。北イタリアは又違うのかしら、もう少しそれっぽい雰囲気があるのかも知れませんね。

シチリアに移ってからは更にしょぼく(笑)、質素というか簡素というか・・・。浮き立つような雰囲気はありません。

年末に向けての忙しく、ザワザワとした感じは勿論ありますが、華やかさには欠けています。しかしそれにはきちんとした理由があるのです。

 

イタリアの伝統的クリスマスの祝い方とは?

近年になるまでイタリアには「クリスマスツリー」という物は存在せず、サンタクロースもやって来なかったのをご存知でしょうか?

バチカンのお膝元であるこの国では、クリスマスと言えば一年で最も大切な行事で、家族で過ごすのが決まりです。

ツリーの代りになるのが「プレゼピオ(presepio)」と呼ばれる物。これはキリスト生誕の場面を人形で表す模型で、12月に入るとあちこちの教会に飾られます。(トップの写真)

馬小屋の飼い葉桶の中は24日の夜までは何も置かれず、真夜中に幼子イエス・キリストの人形が置かれることになっています。

今では普通に行われている、各家庭でツリーを飾り、プレゼントの交換をする習慣はごく最近の出来事なのです。私の周りのシチリア人に聞いたところ、70年代の終わりから80年代初頭くらいからとの事でした。

子供にプレゼントをあげるのは1月6日の「公現祭」の時で、サンタさんではなくホウキに乗った「ベファーナ」と呼ばれる老婆が、良い子にはおもちゃを、悪い子には炭を持ってきます。

今でもこの習慣は残っているので、現代の子供達はクリスマスと公現祭と2度もプレゼントをもらえるわけです。

ここシチリアでは人形ではなく人間がこのシーンを演じてお祝いをするという町がいくつかあり(プレゼピオ・ヴィヴェンテ、生きているプレゼピオの意)、「テルミニ・イメレーゼ(Termini Imerese)」という町もその一つです。

旧市街の角や広場、教会内部に当時のパレスチナの町並みを再現し、受胎告知から聖夜にベツレヘムの馬小屋でキリストが生まれるまでのストーリーを見せてくれます。

役者である住民達はそれぞれの持ち場から動くことなく、見学者である私達が案内人と共に1時間45分かけて旧市街を歩きながら、12の場面を追っていきます。

夕方5時から15分おきにグループに分かれて出発、最終回の8時15分発の回まで全部で14回もありますから、出演者にとってはかなりの重労働でしょう。

クリスマスを挟んだ2回の日曜日と1月に2回、全て予約で一杯になるほどの定評があります。1回につき見学者は100人なので、1日に1400人がこのお祭りのためにやって来る計算です。

 

住民総出で演出”生きているプレゼーピオ”

疲れて眠ってしまったイエス役の赤ちゃんが可愛らしい

舞台となる道端や広場には照明、音響などの舞台装置も完備され演出も抜群、もちろん台詞付きです。

当然受胎告知のマリア様と、馬小屋でのマリア様は違う人が演じるわけで、約40人の登場人物と脇役を250人以上の住民が演じ、2ヶ月かけて準備を行ってきたという話です。

イスラエルの王様のきらびやかな衣装、古代ローマの兵隊の派手な赤い軍服、質素な布で出来た服をまとう一般庶民の対比が、2000年以上昔の生活をすぐ目の前で披露してくれます。

細部にもこだわり、当時の仕事を洗わず職人達、羊やロバなどの動物も一緒に雰囲気を盛り上げてくれるのです。

町の中心であるドゥオーモ広場から、人工的に作られた城壁のアーチをくぐって内部へ入るとそこはもうパレスチナ。

細い坂道を下って行き、受胎告知の場面から物語の始まりです。進むに従ってグングン引き込まれ、まるで知らない土地に来たような錯覚を覚えます。

元来話好きなイタリア人ですから、脇役の人達はコソコソとおしゃべりをしたり笑ったり・・・ということがあってもおかしくなく、それを目にするといきなり現実の世界に戻らされるものですが、そんな様子は皆無。

大人も子供も真剣に自分の役割を演じていました。台詞もない「ただそこにいるだけ」のその他大勢、しかし彼らが全体の雰囲気を作り上げているのだなと実感、素晴らしいです。

準備から疲れ果ててしまったのでしょう、眠ってしまった子供がいたのが何とも微笑ましく思えました。

馬小屋で生まれたキリストを抱いたマリア様とヨゼフに続いて古い教会へ入り、全員で声を揃えて祈りを唱え終わったところで現実へ戻ります。

 

イタリアにクリスマスツリーがなかった理由

城壁のアーチをくぐって内部へ入るとそこはもうパレスチナ

体験してみると、何故イタリアにはクリスマスツリーがなかったのかを理解出来る気がしました。

本来この日は子供たちがプレゼントをもらう日ではなく、あくまでもキリスト生誕を祝う日なのです。

この日私も1時間45分の行程でクリスマスの持つ意味を再確認し、喜び、祝うという気持ちが膨らんできました。

私達日本人にとってお正月が一年の始まりとなるように、彼らにとってはクリスマスが気持ちをリセットする日なのだということを実感できました。

商業ベースに乗ってイタリアにもツリーやサンタクロースがやって来ましたが、子供達にはその方が嬉しい事と思います。

本来の意味とは違って来たクリスマスですが、やはり私個人的にはキラキラのデコレーションとワクワク感がある方が楽しいと思っています。私がカトリックの信者ではないからなのかも知れませんが。

それぞれのお国でそれぞれの過ごし方、その文化の違いが面白いと思います。

Written by 桜田香織(イタリア)

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