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ロックダウンしない方針?!新型コロナウイルス、オランダの現状

2020年3月27日
藤村ローズ (オランダ)

オランダ国王が国民に向けて異例のスピーチ

3月20日には、オランダ国王が国民へ向けてスピーチを発表しました。

これは、新型コロナ重篤患者や亡くなった方やその家族を悼みの言葉、医療従事者、専門家、物流やスーパー、清掃、警察、公共交通機関など死活的重要な職業方々への感謝、そして、日常生活が制限されてしまったすべての国民への温かいメッセージでした。

印象的だったのは、「コロナは止められないが、孤独ウイルスは止められる。警戒心、連帯感、温かさの3つを持っていれば、多少時間がかかっても、この危機を一緒に乗り切ることができる」という言葉。このスピーチにより、オランダ人の心はまた一つになったと言われています。

しかしながら、1.5mの間隔を開けるという指針の元、自粛を求めつつも外出禁止例を出してこなかったオランダ。

この数日は非常に天気が良く、すっかり春らしくなった陽気につられてビーチなどへ繰り出す人が続出し、3月23日に再び政府の会見がありました。

6月1日まで、すべてのイベント・会議は禁止。スーパーや乗り物での人数制限の可能性。3人以上集まってはいけない。家族の一人でも熱を出したら、家族全員が家にいなくてはいけないなど、より厳しい制約が打ち出されました。

守っていない場合は、事業者4000ユーロ、個人400ユーロの罰金が科されるそうです。

これでも止まらない場合、次の段階はついにロックダウン。何とかこの時点で止まってくれるとよいのですが…。

 

街の様子は?

街の様子は、比較的落ち着いています。

アムステルダム近郊の私の住んでいる街は子供たちも公園で遊んでいますし、スーパーも元から混んでおらず、あまり変化がありません。距離への配慮がなんとなく感じられる以外はあまりに普通で逆に心配になってしまうほどです。

最初はトイレットペーパーやパスタなどの棚が空っぽになっていましたが、順次追加搬入されており、購入数制限も功を奏して十分に手に入る状態です。スーパーを訪問したルッテ首相が「10年分排泄できるトイレットペーパーがある」と発言したことも話題となりました。

オランダでは買い占めをする人は少ないようですが、やはり買い溜めの傾向はあり、オランダ語でhamsteren(ハムスター買いする)という言葉をよく聞くようになりました。

こちらはハムスターの食糧を備蓄する習性からできた動詞で、スーパーの売り出し日によく使われており、主婦にはなじみある単語でしたが、今では子供たちも知っています。そして改めて、みんながパニックを起こして買い占めをしなければ物流は回るということを実感しています。

スーパーの入口には1.5m人との距離を取る旨の注意書きが設置され、10平方メートルに1人しか入店できないことになりましたが、その制限人数までいかないようで今のところ普通に入店し、買い物できています。

また、先週アムステルダム中央部を車で通ったのですが、普段観光客で溢れかえっているダム広場周辺はほとんどの店が閉まり、人もまばらでゴーストタウンのようでした。お酒を飲んでいる人や警察もいて、少し怖い雰囲気でした。こんなダム広場は見たのは初めてです。

オランダならではと思ったのは、コーヒーショップに長蛇の列ができていたこと。普段の生活ではマリファナの存在はそれほど感じないのですが、たくさんの人が使用しているという事実を実感しました。(3月15日に一旦閉店したものの、その後持ち帰り用のために開店しています)

一方で市民の力強さも感じています。

飲食店は全てクローズとなりデリバリーと持ち帰りのみですが、SNS上でたくさんの情報がよく流れてきて、利用している人が増えているようです。制限のある生活の中で積極的に楽しみを見つけつつ、ローカルビジネスを支えようという人々のポジティブな姿勢は素晴らしいと思います。

科学的根拠と国民の自主自律を信じ、多くの国がロックダウンする中で独自の新型コロナ対策の道を進んでいるオランダ。新型コロナを通して、オランダのまた新たな一面を見ています。

Written by 藤村ローズ(オランダ)

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