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異文化理解力―相手と自分の真意がわかるビジネスパーソン必須の教養 エリン・メイヤー著

2020年11月11日

異文化の理解力は語学力より不可欠なもの

世界ウーマン読者の中には、日常的に外国人とコミュニケーションを取る必要のある人も多いと思う。

家庭や学校、職場などあらゆる場面で異文化を持つ人々に接する機会はあると思うが、同じ物事についてもこうも捉え方が違うのかと驚いた体験はないだろうか。

直接コミュニケーションを取らなくても、メディアなどで驚きとしか言えない場面を目にすることもよくある。

例えば、先日行われたアメリカ合衆国大統領選挙において、前代未聞ともいうべき開票作業は記憶に新しいことだろう。

一時は優勢となり、先がけて「勝利宣言」まで出したトランプ氏であったが、一旦形勢が不利になったかと思うと、開票差し止め請求をしたことに私はかなり驚いた。

接戦の州を制し、かなり優勢になったとはいえど、まだ決まってもいないのに一国の大統領が重大な声明を出したことにまず驚き、形勢が不利になったや否や、選挙の不正を訴えるという行為にさらに驚かされたのだ。

もう感心するやら、完全に脱帽だった。「いやー、そういう手もあったか」と新たな学びを得た気分だった。

もちろんこのような技が通用するのは、法律の違いもあるだろう。これはトランプ氏のキャラクターによるものであり、すべてのアメリカ人がそうする訳ではないという声があるのも分かる。

それはそうだが、半数近くの人がトランプ氏に投票し、熱狂的にトランプ氏を支持する多くの人がいたのはまぎれもない事実だ。

勝つためにできる限りのことをする、ここまでやってしまうという姿勢は、日本ではなかなか見られないものだろう。

こういうマインドはいくら英語が流暢になっても自然に得られる訳ではなく、アメリカではここまでして戦うという文化理解だと私は捉えている。

 

異文化の理解力は、実は語学力より不可欠なもの

異文化の理解力は、実は語学力より不可欠なものだと筆者のエリン・メイヤー氏は述べる。

二、三十年前であれば、英語が話せるというだけで周りより一歩先に行けたが、今は「語学さえできれば」という時代ではない。

海外で働くと言えばまず語学習得というのは変わらないと思うが、グローバリズムが進んだ結果、それだけでは足りなくなってきている。

グローバルシーンにおけるミュニケーションは、異なる文化背景を持つ人とも「気持ちよい」コミュニケーションを取れることが必要だ。少なくとも相手を不快にさせるような行動をしないように学ぶ必要があると思う。

本書では筆者独自の「カルチャーマップ」というものを作成し、さまざまな国の出身者とさまざまなシチュエーションにおける文化の相違について解説している。

それによると、日本はすべてを言葉で伝えなくても伝わるハイテクスト文化であり、決断においては徹底的な合意主義、見解の相違においては対立を極力回避、スケージューリングはとても計画的だが柔軟性は少ないとのことだ。

カルチャーマップは8つの指標から各国の文化を比較しており、日本はどの指標においても端の方に分布している。つまり「とても極端」という分析結果となっている。

そう指摘されると、意外に感じる人も多いのではないだろうか。

でも日本では普通に行われているやり方が、世界から見ると極端だということを自覚しておくだけでも他文化に対する許容が生まれ、理解を深めるきっかけとなるはずである。

本書は分量が多く、やや学術的に書かれているので読むのに少し時間がかかった。だが、さまざまな国・文化背景についての具体的事例が多く、分かりやすい上にとても役に立つ。

海外で生活している人だけでなく、世界を相手に仕事をしている全ての人に、必読書としておすすめしたい。

Written by 藤村ローズ(オランダ)

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