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パリの国連で夢を食う。

2019年9月9日

この本には、著者の川内有緒さんがパリの国連機関で働いていた5年半に体験したことが書かれている。

そう、川内さんは元国連職員なのである。

パリの国連本部なんて、選ばれた人の中の選ばれた人しか入れない場所だ。なかなかその中の様子を知る機会はないのではないだろうか。

まず、その採用プロセスにもかなり時間がかかるという。

実際、書類を提出してから面接に至るまでの年月は2年。本人も書類を提出したことすら忘れていたある日、突然メールが届き、パリの国連本部へ面接に呼ばれて赴く。

面接を終えて帰国してからもなかなか結果は出ない。面接から3ヶ月から半年で結果が出ると言われたが、すでに日本での仕事をやめて台所事情も厳しくなる頃に、やっと採用通知が届く。

この本では、そんな採用プロセスから、渡航して国連本部で働く様子、プライベートの出来事、そして退職するまでの様子がとてもリアルに描かれている。

また、この本に登場する同僚の国連職員達もとてもリアルだ。国連本部の職員といえばエリートで完全無欠な人だろうと思ってしまうが、彼らはとても人間的だ。それぞれの人物にそれぞれの生活があり、それぞれの悩みを抱えている。

国連本部といえばかなり規律厳しく整然とした組織だろうと想像していたが、実際はパイナップル頭のビキニの女性たちが突如踊りだしたり、次々と湧き出すネズミや紙詰まりが直らないコピー機、存在自体が恐怖のフランス人秘書たちとの戦いなどが起こっている場所なのだという。

そんな国連の中の知らなかった真実が覗けるのもおもしろい。

国連本部は本当にインターナショナルで、それぞれを尊重しながらも葛藤があったり、さまざまなトラブルが起きたりする。それを日々乗り越えながら、タスクを達成していかなければならない。大変なことだが、困難を乗り越えた時の想いはひとしおだろう。

皆さんも海外に住んでいると、同じような経験をしたことがあると思う。

私も自分の留学時代や子供の通うインターナショナルスクールのイベントを手伝った時のカオス感を思い出した。「世界には色んな人がいる。それでもうまくやっていかなければならないし、だからこそ面白いのだ」ということを思い出させてくれる。

 

また、本を読みながら感じるのは、川内さんはとても直感的な人だということ。

ぱっと頭に浮かんだことがあれば、周りの状況をあまり気にせず実行に移してしまう(ように見える)。

例えば、国連から面接に呼ばれたのは年度末で仕事が忙しい時期。「なんでこんな年度末に休むのか」という小言をよそに休暇を取り、パリへ面接を受けに行ってしまう。

面接でパリへ行ったことで、今の仕事は違うと感じるようになり、国連に採用されるか分からないのに仕事を辞めてしまう。

実家で開かれた忘年会で一度会っただけのライターの若者に「パリに行くから数日家に泊めてほしい」と頼まれ、断ろうと思うが、前日にやはり考えを変え、泊めてあげる。そして、年月を重ね、二人は現在夫婦となっている。

ソルボンヌ大学で授業を受けたいと思い、知り合いの教授を紹介してもらったところ、相手の勘違いから講座を受け持つこととなり、講師となってしまう。

エリートなのに、不法占拠したアーティストたちと仲良くなってしまう。

そして、最後には国連を辞めてしまう。

こんなことができるのはちょっと私の理解を超えている。ある意味とても潔い。彼女がこうと決めたら、誰が何をなんと言おうと彼女の決断を変えることはないのだろう。そして、その決断が彼女の人生を面白い方へ導いていく。

本の内容とともに、彼女の人間性にも惹かれてしまう本である。

国連で働くことに興味のある人だけでなく、多様性の中に身を置いている人、パリが好きな人、直感を信じて人生を切り開きたい人にぜひ読んでもらいたい。

Written by 藤村ローズ(オランダ)

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