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道を継ぐ

2019年5月29日

「道を継ぐ」という興味深いタイトルとカラフルでポップな表紙に惹かれて、軽い気持ちでダウンロードしてみたのがこの本。

著者や内容については何の知識もなかったのだが、その軽い出会いはなかなかの衝撃と刺激をくれるものだった。

この本の主人公は鈴木三枝子氏というMINXという日本一のヘアサロンの伝説のヘアスタイリスト。

ただ、彼女はもうこの世にいない。2008年にスキルス胃がんで49歳という若さでこの世を去っている。

本書の著者、佐藤友美氏はもともとファッション誌のライター・エディターである。ファッション誌の中のヘアページを手がける中での鈴木氏と出会う。

そして、すごい衝撃を受けたという。

その圧倒的なスタイルと存在感、そして仕事に対する姿勢。でもそれだけではない。

大抵の人は亡くなると、時を経て人の記憶から薄れていってしまうが、鈴木氏の7周忌には数百人が集まり、彼女の墓前には今でも花が絶えることがないという。

彼女の何がそんなに人を惹きつけるのか。その謎を解くために、1年半にも及ぶ取材を敢行。その不思議な魅力の源に迫る。

 

ヘアサロンのスタッフを中心に取材は進められるが、その中でいくつかのキーワードが浮かんでくる。

彼女が人と最も違うのは「人との距離」。

その生き様は、昨今もてはやされる「スマートな生き方」や「無理しない生活」と真逆だったという。

熱く、泥臭く、愛情深く、誰に対しても真剣勝負。仕事へ取り組むというよりは、取っ組み合いという表現がふさわしい。

人と関わるというより、ぶつかり合う。

仕事などの人間関係では一定の距離感を保つのが普通だと思うが、彼女の場合はとことん突き詰める。人の触れてほしくない部分にもずかずかと踏み込み人の心をひきつけて離さない。

そんな鈴木氏の生き方は、和を乱さないようにあまり目立ちすぎないようにしたり、相手を傷つけないために必要以上に踏み込まないようにする一般的な日本人の特性とは明らかに異なる。

「バカかお前!」と誰にでも言ってしまうフランクさは、真似するのはなかなか難しい。

でもこの本を読んでいると、もう少し濃く激しくのびのびと生きてみてもいいかもしれないと思えてくる。

そんな気付きと勇気を与えてくれる本でもある。

鈴木氏が読者の背中をぐいっと押してくれるような気がしてくる。

この本を読んで、生前の鈴木三枝子氏にお会いしてみたかった、髪を切ってほしかったと思う。

残念ながら鈴木氏はもうこの世にはいないが、彼女のお弟子さんたちがまだ現役で活動している。

いつか機会があれば、お弟子さんたちに髪を切ってもらい、継がれた道をたどってみたい。

Written by 藤村ローズ(オランダ)

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